Q12
■再生医療が普及することに伴うことが想定されるさまざまな社会への影響
再生医療による治療を目指した研究と、病気や障がいと共に生きることへの支援のどちらを重視すべきか?
【アジェンダ】
病気や障がいへの対処には、医療による治療行為だけでなく、病気や障がいをもったまま生きることに対する介護など人的・社会的な支援もあります。しかしながら、再生医療が発展・普及することで、対処が医療のみに偏重してしまう恐れを指摘する声があります。再生医療による治療を目指した研究の支援と、病気や障がいをもったまま生きることへの支援とのいずれをより重視すべきでしょうか。
限られた国の予算のもとで、何に優先的に資金を配分するのがよいのかという観点から、再生医療の研究費の額について、次の中から最も共感する意見を選んでください(*)。
【ひとつ選択】
- 研究費の額は大きい。研究費を削って社会福祉システム(交通機関・建物等のバリアフリー化など)に予算を回すべき。
- 研究費の額は大きい。研究費を削って、身体の機能不全(「歩けない」など)を補う補助具の開発や、日常生活・外出を手助けする介助者の充実を図るべき。
- 研究費の額は小さい。研究費を増やして身体の機能回復(「歩けるようになる」など)の実現に向け、再生医療研究を押し進めるべきである。
- 研究費の現在の額は妥当である。
注(*)
文部科学省の「再生医療の実現化プロジェクト」の平成22年度予算額は補正予算も含めて110億円です(資料1)。他方、たとえば介護保険に対する国からの公費負担額は2007年度で1兆4151億円(資料2)、また国土交通省の交通施設バリアフリー化設備整備費補助金制度で2001?2003年の3年間に支出された補助金総額は142億円で、307駅のバリアフリー化工事が行われています(資料3)
資料1:文部科学省・iPS細胞等研究ネットワーク「iPS細胞研究 再生医療への道:1. iPS細胞研究 過去最大の予算規模」(掲載日:2010年4月8日)参照。
http://www.ips-network.mext.go.jp/column/regenerative_medicine/no01.html
資料2:岩本康志・福井唯嗣「医療・介護保険の費用負担の動向」、RIETI Discussion Paper Series 10-J-035、(独)経済産業研究所、2010年6月。http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/10j035.pdf
資料3:国道交通省交通施設バリアフリー化設備整備費補助金制度http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrier/hojo/hojo01.html
【社会調査の結果】
No.035
私が一番重要だと思うこと:
優生思想につながるのではないか?障害者が今より差別されるなど。
理由:障害者が生きやすい世の中になりつつあるのに、再生医療で障害がより目立つようになることはあり得そう。
No.048
私が一番重要だと思うこと:
優生思想につながるのではないか?
理由:完全なものが良いこととされ、例えば、障碍者が今より差別されたりなど、新たな差別感情が生まれる可能性が考えられるから。
No.059
私が一番重要だと思うこと:
文化の広がりが狭まる。
理由:臓器を再生する際の臓器はなにを基準にして再生するのでしょうか。なにを健常とするか。それを誰が決めるのか。研究者はより良い技術を追求するだけでよいのか。身体にみえる障ガイはどのように考えるか、そこからうまれる様々なものの捉え方などの広がりは再生医療を考える中で必要と感じました。
No.066
私が一番重要だと思うこと:
人が死なない。
理由:医療の現場にいて日々考えるのは、人間の様々な考え方、価値観に反して医療がなされている現実があるという事です。死は、いつか必ず誰にも訪れる事なのにそれを受け入れることが出来なくなっている人が増えているように思います。高度な医療は必要だと思いますが、それだけでは解決できない問題も増えています。死が解決する事もあると思います。
No.071
私が一番重要だと思うこと:
今まで治すことのできなかった障害が治せるようになることにより、より障害者に対する差別意識が深まるのではないか。
理由:今までは、治らないということが逆に、健常者の方には体験できない経験ができたり、他の障害者に対して同情ではなく同じ立場として気持ちを共有できたり等、一つの個性として受け入れることができたが、単に治せる一つの病気にすぎないとなると、そのような捉え方ができなくなる。
No.098
私が一番重要だと思うこと:
病気が治ることは幸福なのか?
理由:治った時点で "本人は" 幸福だと思う。しかし、治療に関する費用、次の病への不安(特に高齢化とあわせて)等もあるので、治療後の生き方についてのケアというのも今後考えていく必要があると思う。(あとは "お金で治す" コトについて、治療できない人々との軋轢、もしくは後ろめたさも出てくるのではないだろうか?)
No.104
私が一番重要だと思うこと:
病気が治ることは幸福なのか?
理由:病気の種類や治療法にもよるが、治ってからの生活とのかかわりが大切かと。もちろん、肯定的に考えて、対処療法しかない疾病で苦しんでいる方へのよりよい医療が進むべきと思っています。
No.160
私が一番重要だと思うこと:
不老長寿社会はどんな社会か。
理由:現在の医療技術の進歩でさえ長寿社会となり不自由ではあるが、独居で生活できる老人が増えている。再生医療というものが、いわゆる障害認定を受けたり、難病と言われる人々のみを対象にするのではなく、あらゆる医療を対象とするなら老人層の増加、逆ピラミッドはますます加速する。医療の進歩のみならず、介護・子育て支援にも力を入れ、バランスをとっていかないといけない。長生きはするが独居、孤独になってしまう。