国際幹細胞学会(ISSCR)に参加しました
2009年7月8日?11日にスペイン・バルセロナで開催された第7回国際幹細胞学会(ISSCR:International Society for Stem Cell Research)に参加しました。
2009年7月8日?11日にスペイン・バルセロナで開催された、「第7回・国際幹細胞学会年次大会」に参加した。参加目的は、?調査研究成果の発表(ポスター)、?各国の研究機関・研究者の科学コミュニケーション活動やELSIへの取り組み等の情報収集、?iPS細胞研究・幹細胞研究の進展状況についての情報収集である。
?については、"Mapping Ethical and Social Issues for iPSC Research and Application"をタイトルとしてポスター発表を行った。聴衆からは、「iPS細胞のELSIは、ES細胞のELSIと大部分が重複している」や「ガイドラインが想定している問題と、研究現場で起こり得る問題との間に大きなギャップが存在している」あるいは「ルール化すべきことと、ルール化できないため議論すべきことを明確に分けて論点整理すべきだ」といったコメントが寄せられた。
また、?については、2008年の大会と比較して、ELSI関連のセッション数はあまり変化がなかった。しかし、2008年はISSCRが幹細胞を使用した臨床研究指針の策定に動いていたため、ELSI分野のセッションへの聴衆数も2009年に比べ明らかに多かった。その意味では、2009年大会におけるELSI分野は今ひとつ盛り上がりに欠けていた感があった。また、研究助成機関などが開設しているブースの数については、2009年度は前年度に比べ半分以下に減少していた。企業ブースも2008年に比べて2/3に減少しており、ブース数が減少した理由は、リーマンショックによる不況の影響や地域的な影響等と考えている。
そして?については、iPS細胞研究の進展の著しさが際立っていた。例えば、iPS細胞研究に関する演題数は前年に比べて約5倍に増えていた。発表されていたiPS細胞研究の大半は、基礎研究段階のものであった。とりわけ、山中伸弥教授が用いた樹立方法以外の手法開発研究や、疾患特異的ヒトiPS細胞の樹立研究が、各国で盛んに行われている状況が目立っていた。しかしながら、臨床研究に関しては、間葉系幹細胞を使用した研究が多数発表されており、再生医療の臨床応用の実現化については、体性幹細胞を用いた治療が有力な手段として進められているということが良く分かった。
これらのことは、科学者を巻き込んでpTA会議を設計する上で、現場の研究者と一般市民とが共通の論点で議論する上では、考慮すべき点だと考えられる。その理由としては、iPS細胞研究を用いた再生医療といった期待が市民の中で高まっている日本の中で再生医療をテーマに研究者と市民が議論を進める際には、「再生医療」といった言葉に対する認識のずれが存在する可能性があると考えられ、そのずれを修正することに配慮することが必要ではないかと考えている。