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【報告】DeCoCiSシンポジウム

floor.jpg 11月19日に行われたシンポジウム「社会の中に活きる科学技術と大学:市民と専門家をつなぐ活動の意義と課題 -市民と専門家の熟議と協働のためのネットワーク(DeCoCiS.net)設立に向けて-」の当日の様子を報告いたします。


 
 2011年11月19日、大阪大学中之島センターにてシンポジウム「社会の中に活きる科学技術と大学:市民と専門家をつなぐ活動の意義と課題 -市民と専門家の熟議と協働のためのネットワーク(DeCoCiS.net)設立に向けて-」を開催しました。

nakajima.jpg シンポジウムは、中島秀人領域アドバイザーによる開会挨拶、ならびに当プロジェクト研究代表者の平川秀幸による趣旨説明ののち、3部構成で行われました。
 第1部「インタフェイス組織」では、組織が熟議と協働を機能させるための具体的な活動例として、参加型テクノロジーアセスメントとコミュニティベースドリサーチ(CBR)について報告がなされました。初めに、国内の他機関での活動例として、三上直之氏(北海道大学)より「北海道大学における参加型テクノロジーアセスメント活動」と題し、熟議の実践例を、菅波完氏(認定NPO法人高木仁三郎市民科学基金)より「高木基金の取り組み:市民ファンドだからできる『市民科学』の支援」と題し、CBRの実践例をご紹介いただきました。その後、当プロジェクトメンバーから「DeCoCiS活動報告」と題し、山内保典(大阪大学)より「市民参加型テクノロジー・アセスメント」、春日匠(大阪大学)より「サイエンスショップ・CBR」、加藤和人(京都大学)より「科学者参加型の熟議?調査と実践に向けた提案」というタイトルにて、当プロジェクトの実践と研究の成果が報告されました。

hirakawa1.jpg 第2部「DeCoCiSネットワーク」では、平川研究代表より「DeCoCiSネットワーク概要」と題し、持続的な市民と専門家の熟議と協働の実現を目指し、市民と専門家をつなぐ活動を行う数々の組織を連携する「DeCoCiSネットワーク」について、その設立目的と概要について説明が行われました。続いて伊藤真之氏(神戸大学)より、「DeCoCiSネットワーク参加組織の立場から」というタイトルにて、DeCoCiSネットワークへの期待と検討課題が提起されました。

 第3部「パネルディスカッション:社会と科学をつなぐネットワークの強化に向けて」においては、パネリストの菅波氏、三上氏、伊藤氏、平川研究代表、ならびにコメンテータの城山英明氏(東京大学)を中心に、会場の参加者も交えて活発な議論が展開されました。
panel.jpg まず、「DeCoCiSネットワークに何をやってほしいか」という問いに対して、「研究・実践の交流の強化」「人材育成」という答えが挙がりました。続いて「熟議とは何か」という問いが出され、「市民が参加することでオルタナティブな視点が出てくることにこそ熟議の意義がある。」「たとえ結論が同じでも、プロセス自体に意味がある。」「熟議を経て世論とは異なる輿論が形成されることに意義がある。」「研究者によって熟議に対する態度は多様である。」「熟議の意義は当該技術に関わる人々の思いを一覧化・可視化し、お互いの話を相互理解すること。また、意思決定ではなく、意思決定支援にとどまるべき。ローカルのみならず、ナショナルで熟議は求められている。従来の方法(ガバナンス)の問題は、アセスメントで制御するという機能と、意思決定の機能がごっちゃにされていること。両者をきっちり分けることが重要。」といった意見が挙がりました。
 それ以外に、「専門家以外の視点を学ぶには修士課程は良い時期だとは思うが、専門性が十分に身についていない現状で学ぶのは難しく、さらに評価の対象にもならない。こういった状況で研究との両立は困難だが、どうすればいいのか。」という問いかけに対しては「現場の人と接するのは非常に大事。迷っているなら歩いた方がいいのでは。」という意見が、「熟議に参加する市民のレベルが、関心の高さのみならず、リテラシーの面でも高く設定されてしまっているのでは。」という問いかけに対しては「熟議キャラバンは敷居を下げるための工夫がされていて、ネットワークもそれを目指している。」という意見が出されました。 (執筆:小菅雅行、中川智絵)

2011.11.29 17:31お知らせ, 活動報告